「セールステックって何?どんな効果があるの?」業務の効率化のためにセールステックの導入を検討している方は、このような疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。知識がなく不安を抱いている状態では、セールステックの導入に踏み切るのは難しいものです。
そこで今回は、セールステックの意味や代表的なツールについて解説します。カオスマップから見る活用シーンや導入するメリットについても紹介するので、セールステックへの理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
セールステックとは?
セールステックとは営業(Sales)と技術(Technology)をあわせた造語です。具体的には、ITを活用して営業活動を効率化するツールや手法を指します。労働人口の不足や働き方改革、コロナウイルス感染拡大をきっかけに注目が高まっている領域です。代表的なツールや具体的なシーンについてそれぞれ見ていきましょう。
セールステックの代表的なツール
セールステックに分類されるツールにはいくつか種類があります。ここでは、代表的なツールについて解説します。
SFA(営業支援システム)
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)とは、企業の営業活動にまつわる情報全般を蓄積して分析・活用できるシステムです。具体的には以下の情報を蓄積できます。
- 顧客の社名・所在地・電話番号・担当者
- 顧客と担当者の間で行われた商談の内容
- 案件ごとの進捗状況
- 営業担当者ごとの受注率や営業数
- 顧客・製品・サービスごとの売上予測
これらのデータがあれば「どの企業にアプローチすべきか」「どのようなアクションが必要か」が分析でき、生産性が高まります。また、営業担当者ごとの課題も可視化されるため、人材育成も効率的に行えます。
CRM(顧客管理システム)
CRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)とは、顧客のプロフィールや購入履歴、コミュニケーション履歴を管理するシステムを指します。自分たちで顧客情報を管理する手間を省けるだけでなく、情報を整理・分析し顧客ごとに提供すべき適切なサービスを導く際にも役立つでしょう。
また、CRMにはメール配信機能や問い合わせ機能も搭載されています。SFAは顧客を獲得するためのツールに対し、CRMは既存顧客との関係を良好に保つツールです。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)とは、集客や販売促進などのマーケティング業務の一部を自動化し、業務の効率化を実現するシステムです。
例えば、MAツールには見込み顧客に対し、自動でメールマガジンを送信できる機能があります。メールマガジンの送信には、見込み顧客のメールアドレスの入手から送信先リストの作成、メールの送信が必要となり、手作業で行うには手間と時間がかかるでしょう。
しかし、MAツールなら自動的に自社サイトのフォームからメールアドレスを獲得し、適切な送信先にメールマガジンを送ってくれます。このようにマーケティング活動の効率化を図ることで、担当者は他の業務に時間を費やせるのです。
オンライン商談ツール
オンライン商談ツールもセールステックの一種です。オンライン商談ツールは、顧客と直接対面することなく、オンラインで営業や商談を進められるツールです。営業先に出向く必要がないため、移動時間を削減でき営業活動の効率化につながります。
カオスマップからわかるセールステックの活用シーン
株式会社インターパークが公開した「セールステックのカオスマップ(業界地図)の2020版」から、セールステックは8つの分野に整理できることがわかります。ここからは、8つの分野で使われるツールや、セールステックの活用シーンをお伝えします。
インサイドセールス/オンラインセールス
インサイドセールスは電話やメールを用いた営業手法、オンラインセールスはインターネットを利用した営業手法です。両方とも営業先へ出向く必要がないため、営業活動の効率化につながります。会社で導入するためには以下のようなツールが必要不可欠です。
- MA(マーケティングオートメーション)
- オンライン商談ツール
- CTI
- 電話アプリ
CTI(Computer Technology Integration)とは、電話やFAXにコンピューターを連携するシステムです。例えば、電話番号をもとに、コンピューターに顧客情報を表示してくれる機能が備わっています。営業先の情報を紐づけるために、このようなツールを用いるとインサイドセールス、オンラインセールスの効率が上がるでしょう。
フィールドセールス
フィールドセールスは顧客のもとに出向いて対面で営業することです。フィールドセールスを効率化してくれるセールステックはSFAやMAなどがあります。SFAやMAを導入すれば、顧客ごとに適切なアプローチ方法を効率的に導き出せるため、生産性の高い営業活動を行えます。
カスタマーサポート
カスタマーサポートを効率化してくれるツールもセールステックの一種です。カスタマーサポートツールには、CRMや問い合わせ管理システム、顧客への回答支援(FAQシステム、チャットボット)などがあります。
例えば、チャットボットを導入すると、簡単な問い合わせにはサイト上でAIが自動回答してくれます。そのため、オペレーターの業務の効率化につながるのはもちろんのこと、顧客の満足度向上も期待できるでしょう。
ペーパーレス
セールステックには、文書管理システムやワークフローシステムなどのペーパーレスの分野もあります。ワークフローシステムとは、申請書類の作成から決裁までの手続きを電子化するシステムです。
文書管理システムやワークフローシステムは紙の無駄使いを減らせるだけでなく、営業活動の効率化につながります。システムを通せば、営業先や出張先からでも営業に必要な情報や資料を確認できるからです。わざわざ会社で確認する手間が必要ないため、効率的に営業活動を進められます。
グループウェア
グループウェアとは組織内でのコミュニケーションを円滑化するシステムです。主に以下のような機能が備わっています。
- ビジネスチャット
- スケジュール管理
- ファイル共有
- 社内掲示板
- タスク管理
さまざまな機能がひとつのツールに集約されているので、使い分ける手間がかかりません。また、社員間の情報共有がスムーズにできるようになり、業務の効率化が図れます。
BI(ビジネスインテリジェンス)
BI(Bussiness Inteligence)は、企業が保有する膨大なデータを収集・分析し、レポートやグラフの形に可視化してくれるツールです。BIツールを導入すれば、膨大なデータを手作業で集計せずとも、製品やサービス、業務の改善につながる情報を得られます。迅速かつ正確に情報を収集できると、効率的に経営や売上拡大の戦略を立てられるでしょう。
セールスイネーブルメント
セールスイネーブルメントとは、成果を出すために営業組織の強化や改善を行う取り組みを指します。そして実現するためには、SFAやCRMのツールが必要不可欠です。
例えば、営業組織には売れる営業パーソンだけでなく、売れない営業パーソンもいます。そこで、営業組織の強化の一環として、成果を出している営業パーソンのパフォーマンスをツールで分析し組織全体に共有します。売上につながる営業活動のコツが可視化されて仕組みとして落とし込めるようになれば、組織全体の営業力の底上げが期待できるでしょう。
ノーコード・ローコード開発
ノーコード・ローコード開発とは、コンピューターへの指示を記述するソースコードが不要、もしくは少ないソースコードでソフトやアプリケーションを開発する手法を指します。
ノーコード・ローコード開発ができるツールを導入すれば、プログラミングスキルがなくてもアプリケーション作成やシステム連携ができるようになるでしょう。そのため、営業担当者でもアフターフォローが可能になり、業務の効率化や顧客満足度の向上が期待できます。
セールステックが普及した理由
セールステックは営業活動の効率化や生産性の向上をもたらすため、日本でも導入済みの企業や導入を検討している企業は多くあります。ここからはセールステックが普及した理由を詳しく見ていきましょう。
技術の進歩
1つ目の理由はクラウドやAIなどの技術の進歩です。従来、自社サーバーを構築したうえでソフトウェアを導入するオンプレミス型の製品が主流でしたが、クラウド型の製品が普及したことにより導入しやすくなりました。
また、AIを組み込むことでツールの品質が上がり、営業活動への貢献度が期待できるようになったことも普及した要因のひとつです。
人手不足
2つ目の理由は少子高齢化による人材不足の加速です。人材不足を根本的に解決するのは、どの企業にとっても困難です。そのため、少ない労働力のなかでも営業活動の生産性を高め、売上を伸ばす工夫が必要となります。そこで、営業活動の効率化を図れるセールステックに注目が集まっているのです。
働き方の見直し
3つ目の理由として、働き方改革やコロナウイルス感染拡大により、働き方が見直されたことが挙げられます。働き方改革により長時間労働に厳しい目を向けれるようになった昨今、限られた時間で生産性を上げる必要があります。
また、コロナウイルス感染拡大により、対面で営業する従来のスタイルでは活動しにくくなりました。このような変化がセールステックへの関心を強めたといえるでしょう。
セールステックを導入するメリット
セールステックは営業活動の効率化のほかに多くのメリットがあります。ここからは、セールステックを導入するメリットを詳しく紹介します。
営業活動の質が上がる
1つ目のメリットは営業活動の質の向上です。SFAやCRMなどのツールを導入すると、営業パーソン一人ひとりの営業活動を可視化できます。可視化したものを使って現状の分析や課題の整理を行えば、営業力のアップに必要な改善策が見えてくるでしょう。組織全体の営業活動の質がよくなると、成約率が上がり売上のアップにつながります。
人手不足への対応策になる
2つ目のメリットは人手不足への対応策になることです。例えば、CRMを導入し顧客情報を手入力する手間がなくなれば、その担当者は他の業務に時間を割けるようになります。顧客とのコミュニケーションなど人間にしかできない仕事と、ツールに任せられる仕事を振り分ければ、人手不足への対応策となるでしょう。
働きやすい環境を整えられる
3つ目のメリットは働きやすい環境を整えられることです。セールステックのなかには、自宅からでも業務に必要な情報へのアクセスを可能にするツールもあります。自宅から情報にアクセスできれば、テレワークの導入はスムーズに進むでしょう。
また、セールステックによって業務が効率化されれば、残業時間の削減も期待できます。働き方の幅が広がり、残業時間もカットできれば、従業員の満足度向上にもつながるでしょう。
セールステックを効果的に活用するためのポイント
セールステックを効果的に活用するためには、次のようなポイントをおさえた導入・運用を行う必要があります。
導入の目的を明確にする
セールステックは、導入するだけで効果が出るものではありません。導入前の段階で、営業活動の効率化や生産性の向上、人材不足への対応など、自社が抱える課題とセールステック導入の目的を明確にしておきましょう。
目的が明確であれば、ツール選定の際に「どのような機能を備えているものを選ぶべきか」が分かりやすくなりますし、導入後の効果測定もしやすくなるでしょう。
既存業務の可視化
導入前の準備段階として、現在実施している業務を洗い出して可視化しましょう。既存業務をプロセスごとに整理してみると、非効率的な業務の進め方をしている箇所が見えてきたり、重複している業務があると分かったり、自社が取り組むべき課題について把握しやすくなります。
営業担当者が求める機能の可視化
業務の可視化ができたら、営業を担当している従業員が求める機能についてヒアリングし、可視化します。
現場の従業員が業務に対して感じていることや、「こういうツールがあったらいいのに」あるいは「こういう機能はあっても使わない、手間になってしまう」といった声を聞き、リストアップしましょう。
こうした現状の把握ができていないまま導入に踏み切ると、現場で求める機能が無くツールの活用率が上がらなかったり、反対に業務をやりづらくしてしまうことも考えられます。セールステックへの不満や反対の声につながる可能性もありますので、現場が求める機能が何かを可視化し、把握しておくことは不可欠であると言えます。
一度に多数のツールを導入しない
従業員が新しいツールに慣れるには、少なからず時間や労力が必要です。一度に多数のツールを導入すると混乱を招き、業務にも支障が出てしまうと考えられます。
複数のセールステックを導入する場合は、すべてを同じタイミングで導入するのではなく、優先度の高い目的を達成できるツールから順に導入していくようにしましょう。そのためには、あらかじめ余裕を持った導入計画を立てておくことが必要です。
ツール導入の周知・浸透を図る
せっかくセールステックを導入しても、従業員に使ってもらえなければ意味がありません。全社集会や朝礼、社内報などを活用して新しいツールを導入したことや使い方を周知して、より多くの従業員に活用してもらえるように努めましょう。
セールステック導入の周知・浸透を図る担当者を決めておき、問い合わせに対応できる体制を整えておくのも良いでしょう。
定期的な運用方法の見直し
セールステックをより効果的に活用していくためには、導入後も運用方法の見直しを行うことが重要です。
定期的に現場の声を聞きながら、効果検証に必要なデータを集め、導入前と後でどのくらい業務改善ができたのかを分析します。その結果をもとにより良い運用方法やツールが無いかを検討して改善し、PDCAサイクルを回していくことで、自社に合ったセールステックの使い方が確立されていくのです。
セールステックを活用するうえで求められるスキル
セールステックは導入するだけでは効果が表れません。活用できて初めて業務の効率化や生産性の向上につながります。次に、セールステックを活用するうえで求められるスキルを見ていきましょう。
ツールを使いこなすスキル
セールステックの導入を成功させるためには、ツールを使いこなすスキルが欠かせません。導入したツールを使いこなせず、従来の営業活動に変化が出なかった企業もあります。
たしかに今までの業務に加えてツールを活用するのは、負担に感じるかもしれません。そのため、いきなり使いこなそうとせずに少しずつ使う機会を増やしていく意識が大切です。徐々に使い方に慣れていけば、ツールの効果を実感できるようになるでしょう。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルの向上は、セールステックの効果を最大化するうえで重要です。
技術がどんなに発展しても、ツールが人間の代わりにコミュニケーションを取ってくれることはありません。対面や電話で直接話すことにより、顧客との信頼関係を構築し成約につなげるのは、人間にしかできないことです。ツールで管理・分析された顧客情報をもとに商談を重ね、顧客の隠れたニーズを引き出せると、セールステックの効果は最大化されます。
データを分析する力
セールステックを最大限活用するには、データを分析する力が必要です。セールステックが数値化したものや予測したデータを、営業活動にどう活かすのかは人間が判断しなければいけません。
データ分析を誤ると、顧客に対し効果の薄い提案をしてしまう可能性があります。正しくデータを分析できて初めて最適な営業活動を導けるのです。
セールステックの効果を高めるツールの選び方
セールステックには、分野や目的が異なるさまざまなツールがあります。そこで、セールステックの導入を検討している企業に向けて、効果を高めるツールの選び方を紹介します。
抱えている課題に効果的なツールを選ぶ
セールステックには何種類ものツールがあり、そのなかから自社に必要なツールを見極める必要があります。そのためには、今の営業のプロセスを可視化し、抱えている課題の分析を細かく実施することが大切です。
あわせて、従業員に業務で困っていることや無駄に感じることをヒアリングするのもおすすめです。自社の課題が明らかになったら、解決につながる機能を持つツールを探しましょう。
自社に合うサポート体制かチェックする
セールステックのツールを選ぶ際は、自社に合うサポート体制が整っているかをチェックしてください。効果を出すためにはツールを使いこなすことが最も大切です。
そのためには使用時の疑問や不安がすぐに解決できるツールを選ぶと、使いこなすまでに時間がかからないでしょう。具体的には「マニュアルがわかりやすい」「問い合わせ先が充実している」といったツールがおすすめです。
費用対効果の高いツールを選ぶ
ツールの導入には、少なからずコストがかかります。無料で利用できるツールもありますが、その多くは機能に制限が設けられていて、業務上で使用するには不便だと感じることもあるでしょう。
しかし、多機能なツールを選ぶと、その分コストがかさんでしまいます。自社の目的を果たせる機能を備えているかどうかを優先的にチェックしながら、求める機能とコストのバランスがいい、費用対効果の高いツールを選ぶことが大切です。
まとめ
セールステックはITを活用して営業活動を効率化するツールや手法を指します。営業活動の質の向上や人手不足への対応策としての効果も期待できるため、導入を検討している企業は数多くあります。
しかし、導入するだけでは期待する効果や成果は得られないため、自社に合うツールを選び、使いこなすスキルを身に付けることが大切です。本記事で紹介したセールステックの活用シーンやツールの選び方を参考に、自社に最適なセールステックを検討してみてください。
AI GIJIROKU ブログ編集部です。議事録や、会議、音声を中心に生産性を向上するためのブログを執筆しています。